「放射線技師 やめとけ」
そう検索して、このページにたどり着いた人もいるかもしれない。
これから放射線技師を目指す学生、なりたての新人、あるいは続けるか迷っている若手。そんな人に向けて、放射線技師として10年以上働いてきた僕の本音をここに書いていく。
先に言っておくと、僕も何度も辞めたいと思った。1年目にも、5年目にも。「薬剤師になればよかった」と後悔した時期もある。だから「やめとけ」という気持ちは、痛いほど分かる。
でも、放射線技師として10年続けた今、僕は一概に「やめとけ」とは言えないと感じている。この記事では、辞めたかった理由や、それでも続けている理由を正直に書いていく。
- 放射線技師が「やめとけ」と言われる理由
- 10年目の僕が後悔し、それでも続けている本音
- 実は放射線技師が『コスパのいい仕事』である理由
- AI時代に、放射線技師の仕事は奪われるのか
正直、何度も辞めたかった

まず正直に言うと、僕は何度も辞めたいと思ってきた。
特につらかったのが、1年目と5年目だ。
1年目は、何もかもうまくいかなかった。検査の手順を覚えるだけで精一杯、先輩の足を引っ張り、患者さんを待たせてしまう。自分は向いていないんじゃないか、とずっと感じていた。
5年目には、仕事には慣れたけど、別の壁にぶつかった。給料は思うように上がらないし、上司の自己満足でしかない指導や行動にストレスが溜まり、このまま続けて意味があるのか、と将来が見えなくなった。
そんなとき、頭をよぎったのが「薬剤師になればよかった」という後悔だ。同じ医療職でも、薬剤師のほうが年収が高いと聞くたびに、自分の選択は間違っていたんじゃないかと悩んだ。この後悔については、別記事で書いている。

「やめとけ」と言われる理由(デメリット)

「やめとけ」と言われるのは、放射線技師に特有な理由がある。おそらく放射線技師あるあるになるので、皆さんで共有していきたい。
地方の病院は、給料が上がりにくい
これは大きい。僕の昇給は、年に1,000〜3,000円ほど。月ではなく、年に、だ。地方の病院では特に給与水準が上がりにくく、頑張って働いても収入が大きく増えることは、まずない。お金の面で「やめとけ」と言われるのは、正直、その通りだと思う。
ただ、大学病院や県立病院・市立病院など公務員系の病院であれば、公務員と給与体系が近いので昇給やボーナスがしっかりしているので一概に上がりにくいとは言えないかもしれない。

体力的な負担がある
当直や夜勤があると生活リズムは崩れやすい。また患者の解除や機械の移動など力仕事も意外と多い。
僕自身、30代に入ってから当直明けの疲労が抜けにくくなり、無理に体を酷使して仙腸関節症も抱えてしまった。(腰の痛みについてはストレスがいちばんの原因だった)
体への負担は、長く続けるうえで無視できない要素だ。
自分自身の被ばく
これから放射線技師を目指す人が一番気にするのが、「自分が放射線を浴びることはないのか」という点だと思う。正直に答えると、多少の被ばくはある。ただ、機械の発達によって、技師が受ける被ばく量は年々最小限に抑えられるようになっている。日常的な検査では、過度に心配する必要はない、というのが現場での実感だ。
とはいえ、注意が必要な場面もある。たとえば、自分で動けない完全介助の患者さんを抱えながら撮影するときや、手術室で透視(リアルタイムでX線を当てる検査)を使うときなど、多少の被ばくを受ける場面もある。
そのため、妊娠を考えている女性や妊娠中の技師は、特に配慮が必要になる。職場でも、こうした場面では防護やローテーションに気を配っている。
一方で、放射線技師の仕事は、X線を使う検査だけではない。エコー(超音波)やMRIのように、放射線をまったく使わない検査も多く担当する。だから「技師になったら必ず被ばくする」というわけではない。職場や担当する検査によって、被ばくの度合いは変わってくる。むやみに怖がる必要はないが、正しく知っておくことは大切だ。
放射線技師は『コスパがいい』仕事でもある

ここまでネガティブな話を書いてきたが、ここから少し見方を変えたい。10年働いてみて、僕は放射線技師という仕事を「実はコスパがいい」と感じている。
誤解を恐れずに言うと、放射線技師の仕事は、同じ医療職の中でも、労働の負担と給料のバランスが取れているほうだと思う。たとえば看護師の仕事は、患者さんの命に直接関わる場面が多く、夜勤の頻度や精神的・肉体的な負担はとても大きい。それに比べると、放射線技師は検査が中心で、もちろん責任はあるけれど、看護師ほど過酷な働き方ではないことが多い。これは職種の優劣ではなく、仕事の性質の違いだ。
その性質の違いを踏まえると、放射線技師は「過酷さの割に、給料は比較的安定している」と言える。爆発的に稼げる仕事ではないが、負担と収入のバランスで見れば、悪くない。むしろコスパは良いほうだ、というのが、両方の現場を見てきた僕の実感だ。
努力すれば、どんどん楽しくなる仕事
そして、これが一番伝えたいことかもしれない。放射線技師は、努力すればするほど楽しくなる仕事だ。
1年目はあんなに辞めたかったのに、なぜ続けてこられたのか。それは、勉強して技術を磨くうちに、検査がうまくこなせるようになり、仕事が面白くなってきたからだ。
撮影の角度、装置の設定、患者さんの状態に合わせた工夫。経験を積むほど、「どうすればもっといい画像が撮れるか」を考えられるようになる。難しい検査をうまくやり遂げられたときの達成感は、何物にも代えがたい。
僕はこれを、よく「ゲーム感覚」と表現する。自分のスキルを駆使して、目の前の検査という課題をクリアしていく。レベルが上がるほど、できることが増えて面白くなる。その感覚に近い。
そして何より、自分の磨いた技術が、患者さんの役に立つ。正確な画像が診断を支え、誰かの治療につながる。この「人の役に立てている」という実感が、続ける原動力になっている。辞めたかったあの頃の自分に、「努力すれば、ちゃんと面白くなるよ」と伝えたいくらいだ。

将来性:AIに仕事を奪われるのか?
将来を考えるとき、避けて通れないのが「AIに仕事を奪われるのではないか」という不安だろう。ここは、現役技師としての僕の見方を正直に書く。
まず知っておいてほしいのは、医療の現場で使われるAIには、性質の違う2種類があるということだ。
検査装置に搭載される「メーカー独自のAI」
一つは、検査装置そのものに組み込まれているAIだ。これは医療機器メーカーが専用に開発したもので、僕たちが普段使うような一般向けのAIとは別物だ。このAIの進化によって、検査時間の短縮や、画質の向上が進んでいる。これは現場にとって、とてもありがたい技術だ。
ただ、AIが進化しても、その装置を操作し、撮影された画像を確認し、最終的に判断するのは人間の技師だ。患者さんの体調や状況に合わせて検査を組み立てたり、不安そうな患者さんに声をかけたりするのも、人間にしかできない。
だから、装置のAIが進歩しても、技師の仕事が丸ごと奪われる可能性は低い、というのが僕の見立てだ。むしろ、AIという便利な道具を使いこなせる技師が、これから強くなっていくと思う。
僕自身も、AIを「道具」として使っている
もう一つが、ChatGPTやGeminiのような、一般向けの生成AIだ。実は僕も、これらを日々の道具として使っている。たとえば、院内の資料を作るときや、学会発表・研究のテーマを考えるときに、相談相手として生成AIに案を出してもらう。AIを敵として恐れるのではなく、自分の仕事や発信を助けてくれる味方として活用しているのだ。
こうしたAIの活用については、別記事でも詳しく書いている。AIに仕事を奪われるかと身構えるより、まず使ってみるほうが、ずっと前向きだと思う。


まとめ:一概に『やめとけ』とは言えない
放射線技師を辞めたいと思ったことは、何度もある。後悔した時期もあった。給料は上がりにくいし、体力的な負担もある。「やめとけ」と言われる理由は、確かに存在する。
でも、それと同じくらい、いいところもある。負担と収入のバランスで見ればコスパは悪くないし、技術を磨けば仕事はどんどん面白くなる。自分のスキルで患者さんの役に立てるやりがいがあり、AIにもすぐに奪われる仕事ではない。
だから僕は、一概に「やめとけ」とは言わない。大事なのは、ネガティブな面も理解したうえで、それでも自分が続けたいと思えるかどうかだ。もし今、迷っている人がいたら、辞めたかった僕が10年続けて、今は「続けてよかった」と思えている——その事実が、何かの参考になればうれしい。


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